縦走路/2019年3月「シカ問題を聞く」
2018 年 12 月 1 日、県連主催の第 35 回岩手県登山者自然保護集会に参加しました。早池峰山のトイレ問題と シカ問題の話をお聞きすることができました。どちらもいろいろ考えさせられる内容でした。紙面をお借りして シカ問題について講演の内容をご紹介したいと思います。
講師は、岩手県立博物館専門学芸員の鈴木まほろ氏でした。2015 年度の岩手県のニホンジカによる被害は、農 業被害約2 億円、林業被害87万円と推計されていますが、生態系の変化による影響が一番大きいと考えられて います。生態系への悪影響として、山菜、蜂蜜、野生動物、生物多様性の喪失、水質低下、土砂災害、景観悪化 等様々なことが考えられます。被害額は算出困難な巨額になるものと考えられます。
早池峰山麓において、ニホンジカ増加によりナンブトウウチソウ、ナンブイヌナズナなどの希少植物の食痕が 確認されており、その対策が検討されています。対策として、①防護柵を設置、②シカの捕獲強化、➂シカの増 加を抑制 などが行われています。
また、以下の登山者にできることもあります。
1) シカの目撃情報の報告(岩手県へ)
2) シカの食痕、糞などの目撃情報報告(岩手県へ)
3) 柵設置作業のボランティア
4) 柵や調査用カメラの購入費の寄付
5) 定点撮影のすすめ
自然保護部では、1 月にシカの目撃情報のアンケート調査(岩手県)に協力しましたが、1)、2)の目撃情報 を随時岩手県に報告したいと考えています。会員の皆様で、目撃された場合は自然保護部に一報頂きたいと思い ます。
ここで、余談。古来、青森以南にはニホンジカが広く生息していたようです。19 世紀後半の「人間」の乱獲に より生息数が激減したのが、20 世紀後半からの「人間」の保護政策により個体数が「回復」基調にあるというこ とのようです。シカからすると、「人間」がシカの本来の生息域を開発したのでやむを得ず厳しい環境の高い山で 生きているのだ、それを「生態系保護」、「駆除」だのなんだのとナント勝手なものだと思っているかもしれませ ん。「人類」が絶滅に追いやった動植物は数知れず、生態系を一番破壊しているのは「人類」という話もあります。 ほんとうに自然と共生するのは難しい話です。
№444 大森 信慈