縦走路/2021年3月「振り返って縦走路を眺めると・・・」

 「縦走路」という言葉から思い起こされるのは、「ご来光を拝んだ後、中央アルプス宝剣岳の頂に立
ち、南にまっすぐ伸びる空木岳への縦走路を眺めた時の事」「さあこれから縦走が始めるぞ」とやる気に
満ち溢れて山に挑む時の事。それから「傾きかけた太陽を見ながら、奥穂高岳の頂に立ち西穂高岳から
歩いてきた道を振り返り、ジャンダルムで落石があったなあ~」と縦走路を振返って感傷に浸りながら、
「やっと終わった」とやり遂げた思いと満ち足りた充実感を味わっている時の事が思い浮かぶ。私は連
なる山々のピークを踏みながら、そして周りの山々を眺めながら歩く「縦走」という山行スタイルが好
きだ。そして頂にたたずみ、縦走路を振り返った時、色々な出来事が脳裏に蘇り、一つ一つがこれから
の山旅の糧になると思われるからだ。
 私が山友会に入会してからの足跡を振り返ってみると、多く山々に登り、多くの経験をしてきた。
2004 年 1 月の「鞍掛山新年山行」が私のデビューだった。初めてシールというものをスキーにつけて
歩いた時の感動は今でも忘れられない。その後すっかり雪山の虜となり、毎年雪の三ツ石山と八幡平は
欠かしていない。素晴らしい樹氷を見に八幡平に入るが、ホワイトアウトや凍傷の危機に瀕する時もあ
った。また夢に抱いていた「スキーで岩手山、山頂を踏む」という目標も達成した。クライミングや沢
登り、ボルダリングという未知のジャンルにも触れて、山登りの楽しみが倍増した。それから TV でし
か見たことがなかったマッターホルンにもタッチ出来たし、ヒマラヤの 8000mの山々を間近に見上げ
て歩くトレッキングも体験した。山友会の仲間に恵まれ、たくさんの山の楽しみ方を教えてもらった。
そして、山行では役割分担があるが、当初はいつもアカゲラ執筆担当で、そのおかげで山行記録をつけ
る習慣ができた。また、2013 年から始めたユーチューブの山行記録も 150 本を数え、これは足腰が立
たなくなり、山に行けなくなった時に振返って見る楽しみだ。
 これが私の山旅の振り返り~・・・。いやいや、まだ歩んできた山の思い出を振り返っていられない。
目の前に百名山の 9 座が立ちはだかっている。もう少し山登りを楽しんでから、私の山旅を見つめなお
すことにしよう。
 さて、山友会の機関紙「あかげら」に続けられた「縦走路」という巻頭のページを飾るペンリレーが、
今回で最終回とのこと。今まで多くの会員がつないできた山に係わる思いの記録は、山友会の絆であり
大きな財産だ。コロナ禍で、社会経済が大きく様変わりしようとしているいま、盛岡山友会は創立 35
周年を迎える。全国の山の会は、会員の高齢化で衰退しつつあると聞く。歴史や伝統は尊重しつつ、新
鮮な空気を取り入れていかないと組織の発展はない。我が山友会もかつて経験したことのない社会の変
化の中で、新しく生まれ変わろうとしている機関紙「アカゲラ」に期待する。

No.305 山田 潔

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