縦走路/2019年4月「子ども達と自然保護」

 今年度の辞令式後の職員会議の最中に、新元号が「令和」となったとの情報がはいってきました。新入職 員は私の孫と年齢が近く、新元号に笑みが浮かび緊張から解放された、印象的な4 月1 日になりました。
 平成の5 年目に盛岡山友会に入会したのだから、もう古手会員にはなっている事に驚きもしています。「あ の山に登りたい、雪山にも行きたい」希望は自分の努力なしには実現しない事を否応なしに理解も出来まし た。山友会に入り、学ぶものが多大にあり、その事が職場で働く中でどれ程の力になってくれた事でしょう か。今年で47 年目の勤務に入ろうとしております。
 山では自然保護部に所属して、早池峰山のし尿汲み取りが、一番印象が強く残っております。年を取ると 共に、河原の坊コースは厳しさを増してきましたが、ハヤチネウスユキソウをはじめとする山野草に、どれ だけ救われてきた事でしょう。あの可憐で美しい山野草にどうしてこんなにも魅かれてしまうのでしょうか。
 今の職場は児童養護施設で、何らかの事情で家庭では養育できない子ども達が入っています。3 月には退 園式があり、挨拶の中に「15 年間お世話して頂き有難うございました。」と涙ながらに話す18 歳の子ども がおりました。3 歳の時に小さなリュックを背負って故郷を後に、児童相談所の職員の手をしっかりと握っ て、どんなにか不安な気持ちで、この盛岡に来たことだろうかと想像して私も涙が止まりませんでした。
 大人の庇護なしには生きていけない子ども達と、守られなければ絶滅してしまう高山植物達、いつしか 私は自分自身のポリシーとして、守り抜く者(物)をしっかりと掴んだと思ったのでした。
現実の仕事は、なにせ子ども相手なのですから体力なしには、やっていけません。「山友会もとてもきつ くてついていけない」と思いながらも離れがたいのはなぜなのでしょう。登った山の魅力もさることながら、ひとりでは頂上までたどりつけなかった山が、どれほどあった事かと思う時に、山友会の仲間の顔が浮か んでくるのです。本当に多くの仲間に助けられてきました。その優しさが、私は職場の子ども達を養育して いく時の根底にもなってきたと思っています。
 自然を守る事と、子ども達を守る事は同じだと思う心を忘れずに、これからも自分のペースで山歩きをし て行こうと思っています。

№128 川村雅子

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