縦走路/2019年6月「山スキー(銀世界)の魅力」

 盛岡山友会に入って、もう 10 年以上になる。65 歳で退職して、暇になったからという程度の入会なので、相 変わらず初心者の壁を超えられない。 こういうぐうたら会員なのだが、入会しなければ絶対やれないことをやってしまった。登山するなら、山友会 に入らなくてもよい。旅行会社の企画するガイド付き登山がたくさんある。しかし、一般人への冬山登山の企画 はない。当たり前だ。冬山は危険。天候は急変する。中止の連続では商売にならない。ところが、山友会には冬 山スキーの<グループ銀世界>がある。スキーができないのに、冬山スキーに参加を認める、などというバカな ことができるのが、グループ銀世界に入ることだった。もともと私はスキーをしたことがない。子供たちが小学 生の時、岩山ゴルフ場のスキー場に連れて行ったついでに八の字で滑ったぐらいだ。とてもパラレル滑りは無理 だった。
 銀世界に入ったから、八の字スキーでは自分が困る、というわけで、スキーの練習を始めた。なんとか山スキ ーに参加できるように練習した。もちろん先生の資格を持つ会員に教わった。スキー場のゲレンデではパラレル で滑れるようになった。われながら<すごい>上達だと思った。ところが、ゲレンデの技術は冬山スキーではま ったく通用しなかった。よほど雪質がいい時とか、斜面が緩い時しかパラレルでは滑れない。ほとんど、八の字 滑降になった。しかし、<完璧な?>八の字滑りの方が事故もなく、上手な人について行けた。といっても、や はりこのレベルでは、連れていくベテランの方が困るのだが・・・。それでも、銀世界の人たちは、スキー下手 な私でもむしろ誘ってくれた。
 夏山なら登山道しか歩けない。冬山スキーの魅力は、目的地さえ間違わなければ、どこを通ってもいいことだ。 何度も登って、知っている山でも、冬山ではまったく違う場所を通ることができた。色のコントラストもまたす ごい。真っ青な空、まっ白な大地、これは夏山では無理。銀世界でなければ絶対できない体験だ。鳥海山や月山 からの長く、広いゲレンデでの滑降、三ツ石の氷雪上のこわごわ滑り、姥倉から網張温泉、あるいは松尾(岩手県 民の森)へとか、八幡平の山小屋泊り、などなど、夢は今も巡りて、という想い出が残る。
 しかし、生きているということは年を取ることなのだ。無理はできなくなった。銀世界の人たちにはお世話になった。今は、冬山に<オ・ルヴォワール>( 再見 ザイ ジィェン 、see you again、また会う日まで)を告げる時。(若い?)
みなさん、今やれることは、なんでも挑戦してください。

№354 菊地良夫  

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