縦走路/2019年10月「里山の秋」

 勤務先が移転したため通勤路が大きく変わりました。先月、盛岡市近郊に交通規制への協力を呼びかけ、全国ニュースにもなった「あの」移転によるものです。
 これまでは国道4号線をメインに上田や本町の商店街を通っていたので、朝は岩手山を背に走り、帰りは岩手山に向かって帰宅するというコースでした。それが今は最初に岩手山を見てから箱ヶ森に向かって走り、気が付けば紫波三山を横目に走り、駐車場に着けば乙部三山が間近に見えるというコースになりました。
 何とも贅沢といえば贅沢なコースなのですが、まだまだ不慣れな通勤路、山並みを眺めながらの運転は危険ですので、これからの冬季に向けてのコース探しを兼ねて、休日に山並みを見ながらのんびりドライブに出かけてみたいと思っています。
 さて、勤務先が移転してからの密かな愉しみもあります。今のところ昼食は勤務先の駐車場の車中でとっていますが、そこから岩手山が望めるのです。最初は「岩手山が小さい」と、ちょっと寂しく思ったのですが、今では 「ここからでも見える!」、「岩手山を眺めながらおにぎりを食べられる!」と、ポジティヴに考えられるようになり、近年思うように山行できない私にとっては貴重なひと時になりました。午前中の職場のストレスもリフレ ッシュされ、「午後からまた頑張るぞ!」という気にもさせてくれますしね。
 ところで山友会の皆さんならご存知のことと思いますが、秋は「山粧う」季節です。これは中国の山水画家である郭煕(かくき)の画論に拠るものだそうですが、春の「山笑う」、夏の「山滴る」、冬の「山眠る」とは何とも相応しく味わい深い表現だと今あらためて思っています。そう、これは登山しながらではなく、里から山を望んでこその表現なのだと思います。
 これからは里山の秋の粧いを横目に見ながら、そして眠りゆく里山への移ろいを見ながらの通勤となります。 山行ができなくても山の愉しみがもうひとつ増えたようで、通勤の苦労や寂しさもほんの少しだけ紛らわせてもらっている今日この頃です。

№357 渡部 彩子

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